本レポートでは、リコー、ゼロックス(富士フイルムBI)、コニカミノルタ、シャープ、京セラの各メーカーの複合機における、個人認証キットを利用してスキャンしたPDFファイルのメタデータにユーザーのIDまたは氏名を埋め込む機能の有無と、その詳細について調査した内容をまとめています。
ベンダー | ユーザー情報のPDFメタデータ埋め込み機能 | 備考・条件 | 情報ソースURL |
---|---|---|---|
リコー | なし | 電子署名機能はあり、PDFの作成者情報は機器登録の証明書による(個人認証ユーザー名ではない) | - |
ゼロックス(富士フイルムBI) | あり | 複合機の設定により、ログインユーザー名/カードIDを自動で埋め込む(ApeosPortシリーズなど) | 富士フイルムBI公式サイト – ApeosPort |
コニカミノルタ | あり | オプションライセンス(i-Option LK-102/110等)で、ユーザー認証時に自動設定可能(bizhubシリーズなど) | コニカミノルタ bizhub 製品情報 |
シャープ | あり | オプションの「アプリケーション統合キット」などで、XMP形式メタデータとしてユーザー認証情報を埋め込み可能 | シャープ複合機 製品情報 |
京セラ | なし | 標準機能ではPDFプロパティへの自動記録はなく、外部ソリューションでの補完が必要 | - |
概要:
リコー製複合機では、スキャンPDFのメタデータにログインユーザーの情報(ユーザー名等)を自動で記載する標準機能は提供されていません。
詳細:
- 電子署名機能:
電子署名機能を用いてPDFに作成者や作成日時を証明することは可能ですが、これは機器に登録された証明書を用いるため、ユーザー認証に基づく個別のユーザー名が自動記録されるものではありません。 - 代替案:
必要な場合は、スキャン後にPC側でPDFプロパティを編集するか、専用のドキュメント管理ソリューション(例:Ridoc系やRICOH Smart Integrationなど)を利用して、補完する必要があります。
概要:
富士フイルムBI(旧富士ゼロックス)の複合機は、ユーザー認証後にスキャンPDFの「作成者」フィールドへ認証ユーザー名やカードIDを自動で記録する機能を搭載しています。
詳細:
- 設定:
複合機のWeb管理画面または操作パネルの管理者設定で「認証ユーザー名の記載(PDF)」という項目をオンにすることで、この機能が有効になります。 - 対象機種:
ApeosPortシリーズやDocuCentreシリーズなどの現行機種に搭載されています。初期設定ではオフになっている場合があるため、管理者による設定変更が必要です。
情報ソース:
詳細は富士フイルムBI公式サイトのApeosPort製品ページをご参照ください。
概要:
コニカミノルタ製複合機では、オプションライセンス(i-Option LK-102またはLK-110)の導入により、ユーザー認証時にスキャンPDFの「作成者」欄へログインユーザー名を自動記録することが可能です。
詳細:
- 対象機種:
bizhubシリーズ(例:bizhub i シリーズなど)にて利用可能です。 - 設定:
管理者モードでi-Optionライセンスを適用後、スキャン設定から「PDF文書のプロパティ」設定画面にて、ユーザー認証が有効な場合は自動的にログインユーザー名が適用されるよう設定されます。
情報ソース:
コニカミノルタのbizhub製品情報は、こちらをご確認ください。
概要:
シャープ製複合機では、オプションの「アプリケーション統合キット」などを利用することで、XMP形式のメタデータとしてPDFにユーザー認証情報を埋め込むことが可能です。
詳細:
- 設定:
管理者モードでメタデータ送信機能を有効にし、送信時に生成するメタデータの項目にユーザー認証情報(userLoginId等)を含める設定が可能です。 - 対象機種:
中高速機(BPシリーズやMXシリーズなど)に、オプションキットを装着することで利用できます。 - 注意点:
暗号化PDFの場合は、PDF内部に直接埋め込むのではなく、XMLファイルとして添付する方式になる点に注意が必要です。
情報ソース:
シャープの複合機製品情報については、こちらを参照してください。
概要:
京セラ製複合機では、ユーザー認証は実施されるものの、スキャンPDFのメタデータにユーザー情報(IDまたは氏名)を自動で書き込む機能は標準では提供されていません。
詳細:
- 機能:
京セラは、ジョブログの記録や管理を主目的としており、PDFファイル自体のプロパティにユーザー情報を埋め込む仕組みは含まれていません。 - 代替案:
もし同様の要件を実現したい場合は、外部ソリューション(例:PinPoint Scan、DMConnectなど)を利用して、ファイル名へのユーザー情報の付与や、後処理でメタ情報を編集する方法が検討されます。
PDFメタデータの概要:
PDFのメタデータは、文書の「タイトル」「作成者」「キーワード」などの情報を保持するために、XMP(Extensible Metadata Platform)形式でPDF内部に埋め込まれています。
- 直接埋め込み:
複合機側で認証情報を読み取り、PDFのプロパティフィールド(Author等)に自動で記録する方法。 - XML添付:
スキャン画像と一緒に、XML形式のメタデータファイルとして出力し、別ファイルとして管理する方法。
(暗号化PDFの場合は、XML添付方式が採用されるケースがあります。)
各メーカーの対応:
- ゼロックス(富士フイルムBI): 直接埋め込み方式を採用。
- コニカミノルタ: オプションライセンス導入後に直接埋め込み方式が利用可能。
- シャープ: メタデータ送信機能により、直接埋め込みまたはXML添付方式を選択可能。
- リコー・京セラ: 標準機能では直接埋め込みは行わず、別途対策や外部ソリューションが必要。
- ゼロックス(富士フイルムBI)、コニカミノルタ、シャープは、現行機種においてユーザー認証と連動し、PDFのメタデータにユーザー情報(ID/氏名)を自動で記録する機能が提供されています。
- リコーは電子署名機能は有するものの、ユーザー認証による個別情報の記録は行っておらず、必要に応じた別途の対策が求められます。
- 京セラは標準機能では対応しておらず、外部システムとの連携等による代替手段が必要です。
上記内容は各社の公式マニュアルおよび製品カタログをもとにまとめたものです。導入検討時は、各メーカーの最新の仕様書やサポート情報をご確認いただくことをおすすめします。